表題は僕の友人のカメラマン能勢広さんの監督した新作の記録映画作品だが、日本の科学映画の歴史に大きな足跡を残した鈴木喜代治の遺品の中から見つかった1冊の小さな手帖に書かれた撮影メモの記述をもとにした作られた記録映画である。鈴木喜代治は昭和20年9月、日本映画社によって撮影され、その後米軍に接収された記録映像『広島・長崎における原子爆弾の影響』の撮影スタッフに加わり、生物班のカメラマンとして原爆投下直後の広島での撮影に携わったが、その時綿密な撮影メモを残していた。

能勢広さんは鈴木喜代治のお孫さんに当たる。鈴木の残した貴重なメモが70年以上の時を隔てて、お孫さんの手で1本の記録映画として甦ったのだ。

原爆による壊滅的な被害の直後の広島で撮影され、アメリカに接収されていた映像はのちに日本映画社に返還されて、この作品にも、鈴木喜代治のメモの記述とともに使われている。当時の映像によってメモの文字のリアリティが浮かび上がり、文字の記述が映像に説得力をもたらしている。

あまり目立たない、地味な作品だけに人の目に触れる機会が多ければいいと思っているが、この作品、今年度の「科学技術映像祭」で文部科学大臣賞を受賞したと聞いた。そういうキッカケで上映機会が増えることを期待している。