9月
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Posted on 05-09-2012
Filed Under (未分類) by toda

僕は一応映画史を勉強してきたので、G・メリエスの『月世界旅行』(1902)は何度も見ている。ただし、いずれも完全なものではなく,どこかが(多くはラストのシーンだが)欠落した不完全なもの。というのは、映画史上の超有名作であるこの作品、ジョルジュ・サドゥールの『世界映画全史』にシナリオも掲載されていて、30場面で上映時間16分と書いてある。だから、それより短いものはどこかのシーンが欠けているということになる。

僕の持っているアメリカ版の「The MOVIES BEGIN」というDVDシリーズの『A TRIP TO THE MOON』はDVD用のタイトル込みで11分45秒しかない。他にも日本で出たDVDやビデオも皆似たような長さで不完全なものだ。これ以外に僕は13分超の作品も見たことがあり、それはラストシーンの一部分が入っていた。そして、僕が見たのはすべてモノクロだった。

今日、青山のイメージフォーラムで見た『月世界旅行』は15分32秒の尺があり、ほぼ完全版と思われるものだった。しかもカラー版(着色)!

なんと『月世界旅行』カラー版なのだ

この映画にカラー版があることは『世界映画全史第3巻』に紹介されているメリエスの発言などで、想像はできたが、どこにも残されていないと思われていたらしい。それが、1993年にスペインのバルセロナで奇跡的に発見されたという。ただしフィルムはぼろぼろに劣化した状態で修復は不可能だったらしい。

それがほぼ20年かかって、フランスとアメリカの技術陣の手でオリジナルと同じクオリティで修復され、上映が可能になった。去年のカンヌ映画祭で初めて上映され、今回日本での上映が実現したという。20年がかりというけど、最初、湿気た焼き海苔のカタマリのようになっていたフィルムを蒸気を当ててほぐし、バラバラの断片にしたまま、10年近く保存したという。その間、修復・着色のためのデジタル技術の進歩を待っていたのだというから驚いてしまう。メリエスのお孫さんのところに保存されていたモノクロのオリジナルを修復のモデルにしたとも聞いた。2010年から、アメリカのテクニカラー社の技術が駆使されて、フィルムは20世紀初頭の着色カラー映画そのままに蘇った。

草創期の映画には実はカラーの作品が沢山ある。人の手で1コマ1コマ色を塗ってカラー画面を作っていたのだ。フィルムのコマの着色作業をする女性たちがメリエスの作業場にズラーッと並んで仕事をしている写真が残っている。かつての日本の紡績工場のような感じでもある。

映画には音がつくより前に色が求められたのは何故だろうか。