7月
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Posted on 22-07-2012
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先日、といっても例によってだいぶ前のことだが、明治大学の図書館で「城市郎文庫展」を見た。「城市郎文庫展~出版検閲と発禁本」という展覧会だ。

城市郎という人とその仕事を知ったのはいつ頃だったろう。1960年代の末か70年代に、ぼくらは明治・大正時代のちょっとヘンな書物にはまったことがある。宮武外骨や梅原北明・・・。その時に、城市郎の本の存在を知ったのだった。桃源社から出ている城市郎の本を何冊か買って読んだ記憶もある。今も持っているはずだ。それで、この展覧会のことを知ったとき、すこしなつかしいような気分になったのだ。

ところが、この展覧会、想像していた以上にすごいものだった。城市郎氏(今年90歳)が長年に亘って収集した明治、大正、昭和の発禁本7,000冊あまりの個人コレクションを明治大学に寄贈したのを記念して開催され、明治以降から戦後までの発禁本がずらりと展示されている。珍しくちょっと興奮してしまった。

戦前の出版検閲や書物の発禁処分について、それほど深い関心があるわけではないが、書名だけは知っていた本、例えば幸徳秋水の『兆民先生』や『平民主義』『社会主義神髄』の実物を始めて見た。これらはみんな明治時代の発行の少し後で発禁になっている。「安寧禁止」だ。

しかし、展示された書物を見ながら気がついたのだが、明治、大正に発行された本が昭和10年代に「安寧禁止」で処分された例が圧倒的に多い。戦争遂行と書物の発禁が深く関係しているという当たり前のことに思い至る。

プロレタリア文学や社会主義思想に関する書物が多いが、エッ!と驚くような本も発禁になっている。岩波文庫の『文明論之概略』、福沢諭吉の有名な著作だが、文庫が出たのは1931(昭和6)年、それが昭和11年に発禁になっている。「安寧禁止」。ボードレエル『悪の華』(矢野文夫訳)は昭和16年発禁。これは「風俗禁止」が理由だという。織田作之助『夫婦善哉』とか深田久弥『鎌倉夫人』とかエッ!はキリがない。鎌倉夫人は新聞小説で、作中、帝国海軍軍人がバスの車掌と恋愛するのは怪しからんという理由で風俗禁止で中断を強いられたという。ファシズムのグロテスクはすごい。

昔の書物は何となく風格がある