6月
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Posted on 21-06-2012
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一昨日の夕刊に「本の迷宮にようこそ」という見出しの記事があった。丸善丸の内店4階にある「松丸本舗」と名前のついた棚の、本の独特の並べかたが紹介されている。「文脈棚」というのだそうだ。「松丸本舗」では本の棚は渦巻きのようにぐるぐるっと並んでいて、本の並びも例えば岩波文庫「ブッダのことば」からマンガ「テルマエ・ロマエ」、文庫クセジュの「古代ローマの日常生活」と続き、ホメロス、ダンテという風に並んでいるのだそうだ。本の分類を著者別や分野ごとに分けるのではなく、読者(お客)の関心の連鎖に呼びかけるような並べかたをしている。こういうのを考えたのは編集工学研究所長の松岡正剛さんという人。松岡さんは昔見せてもらった武田泰淳さんの書庫のイメージからこれを考えたという。武田泰淳さんは「本は天体ショーみたいなもの」と語っていたそうだ。

なるほど。他の本屋さんでも、これと似たような、例えばテーマごとに様々な著者の本をまとめる並べ方をしているのを見たこともあるが、書店では本の並べ方(棚の作り方)次第で売り上げが大きく違うというのも聞いたことがある。

また、「文脈棚」のようなのは、ある種のこだわりを前面に出している古書店の目録にもある。僕の知っているのでは大田区の「月の輪書林」の目録だ。毎回テーマを定めた分厚い目録で、月の輪書林店主の思考過程が本の並びに「表現」されている。例えば「月の輪書林古書目録12・特集寺島珠雄私記」。アナーキスト詩人寺島珠雄の著書、雑誌掲載記事から、寺島に関する記事や著述、同時代の関連書、寺島の著述に関わる諸々など、それほど著名ではない詩人について1万5千冊程の書名が並んでいる。450頁に及ぶ目録だ。驚くような連想や関連性への好奇心、また書物によって世界の果てまで連れ去られるようなスリルに満ちた本の連鎖だ。文脈をたどりながら書物の森に迷い込むような感覚がある。古書店の目録だが、これ自体が豊穣な読書体験を突きつける。確かに本の連鎖はスリリングだ。

で、僕の本棚を眺めてみると、並べ方はいかにも平凡。だいたい分野ごとにまとめて、同じ著者の本を集めている。僕は映画に関する本が多いが、残念ながら本の並べ方で何かが見えてくるというほどのモノではない。月の輪書林はムリとしても、松丸本舗風に並べ替えてみようかと考えたが、めんどうになってやめた。

映画に関する新書版を並べた書棚の一部分。本の大きさや形で集めている。およそ文脈的ではないか