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Posted on 27-02-2012
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先週、久しぶりに逢う古い友人夫妻を訪ねて岡山に行った。そのついでに、というか、合間に岡山からJR瀬戸大橋線に乗って瀬戸内海を渡り、香川県丸亀にある猪熊弦一郎現代美術館へ行ってきた。前から一度行きたいと思っていたのだ。

瀬戸大橋は鉄道と自動車道路が2階建てになった橋だが、鉄道が下側で道路がその上にある。僕は車でここを通ったことはあるが、鉄道は始めて。そして、海の上の架かった橋を渡る実感は鉄道の方が断然すごいと知った。海上を走っている間、列車の窓から真下の海面がよく見えるのだ。車で走るとそういうことはない。備讃瀬戸の島々が瞬く間に通過してゆく。昔取材で行った事のある与島や櫃石島を上から眺めているうちに、列車は四国に入った。

猪熊弦一郎の美術館は予讃線の丸亀駅前にある。文字通り駅前美術館だ。にぎやかな商店街もなく人通りも少ない駅前の空間に写真のような巨大な建造物があって、これが美術館の正面だ。

猪熊弦一郎は1993年に90歳で亡くなったが、ポピュラーな人気のある画家として活躍してきた人だ。画家としての大きな業績はもちろんだが、僕らには上野駅のコンコースに描かれた壁画「自由」(1951年制作)や戦後ずっと描いていた「小説新潮」誌の表紙が記憶に残っている。大正11年に入った上野の美術学校の同期生に、岡田謙三,荻須高徳、小磯良平などの逸材(他にもキラ星のごとく)がいたというからすごい。

タブローではアンリ・マチスの影響が感じられるような人物像や女性の顔の絵が印象的だった。実際、1930年代後半にパリで学んでいた猪熊にマチスが「お前の絵はうますぎる」と言ったという逸話があるらしい。

1902年高松市生まれだそうだが、少年時代から丸亀で育ったという。それで丸亀市に個人美術館が建てられたのだろう。ここでは、フラッシュを使わなければ、展示作品は自由に撮影できる。ゆったりとした壁面に大きな作品が掛けられ、モダンで贅沢な空間がひろがっている。

 たいていの画家は高齢になっても絵を描いているが、猪熊の場合も晩年に描かれた、ちょっとしたスケッチやコラージュ、さまざまな造形物がじつにおもしろい。一筆書きのような小さなスケッチなんかにも描写の素晴らしさが感じられる。ピカソもそうだが、こういうところにも画家の精神の運動の緊張感が表れている。